前田氏がSHOWROOMを立ち上げる際に取っていたメモ、そこからの抽象化や転用の流れなどの具体例も書かれていますし、肝である「取ったメモを抽象化する」ステップについても方法が書かれていますのでそのまま実践が可能です。
私は新規事業の立ち上げ、新しい取引先とのアライアンス推進など企画系の仕事が増えたときに購入。新しいビジネスを立ち上げて成功している人たちはどんなインプットをして、どうやってアウトプットにつなげているのか、が気になって読みました。
メモによって人生を変えられる
著者の前田さんは365日、朝起きて、寝るまでいつでもメモが取れる状態にしており、おびただしい量のメモをとっているそうです。
メモを取ることで下記のような3つの効果があると書かれています。
- あらゆる日常の出来事を片っ端からアイディアに転換できる
- 対象を「自分自身」に向けることで自己分析が深まる
- 夢を現実にできる
メモを取ることで「情報をアイデアに変える」「自分を客観視して、自分を理解する」ことができ、自分の進む方向を見極める「人生のコンパス」を手に入れることができます。
それぞれの方法についてご紹介していきます。
メモで日常をアイデアに変える
まずは日常をアイデアに変えるためのメモのとり方です。
知的生産のためにメモをとる
前田さんはメモには2種類あると定義しています。1つは「記録のためのメモ」、もう一つは「知的生産のためのメモ」、です。
「記録のためのメモ」はファクトを残して置くためのメモです。事実を伝えるためには重要ですが、ありのママの情報を残しておくだけであればコンピュータでも可能です。人がするべきはコンピュータではできない独自の発想やセンスで新しいアイデアを生み出すことです。
メモを取る際も新しいアイデアを生み出すこと、を意識して書くだけでメモをした情報の見え方が変わっていきます。
メモによって鍛えられる5つのスキル
メモを取ることでたくさんのいいことがおこると前田さんは書いています。
- アイデアを生み出せるようになる(知的生産性の向上)
- 情報を「素通り」しなくなる(情報獲得の伝導率向上)
- 相手の「より深い話」を聞き出せる(傾聴能力の向上)
- 話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
- 曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)
アイデアを生み出すメモの書き方
実際に前田さんが実践しているメモのとり方は下記の通りです。
- ノートは見開きで使う
- 左にはファクト(どこかで見聞きした、客観的な事実)を書く
- 左ページの5分の1ぐらいの位置に標語欄を設けて「要は何の話か」というエッセンスをまとめてみたり、キャッチーなネーミングをしたりする
- 右側は半分に使い、左半分は抽象化した要素、右半分は転用した要素を書く
メモはファクト→抽象化→転用が最も重要
本書の最もキーとなる部分ですが、メモを取る上で重要なポイントは下記の3点です。
- STEP1「ファクト」をインプットする
- STEP2気づきを応用可能な粒度に「抽象化」する
- STEP3自らのアクションに「転用」する
「抽象化」が非常に重要なアクションですが、抽象化について前田さんは下記のように書いています。
「ここで書いた具体的な情報を受けて、何か言えることはないか。そこに気づきはないか。他に応用可能な方法はないか。」こうした作業を僕は抽象化と呼んでいます
『メモの魔力』より
ファクトを抽象化し一般化することで、他にも転用がしやすくなり、新しいアイデアを創りやすくなっていきます。
手書きでメモを取ることのメリット
最近ではスマホやPCでメモを取る方が多いと思いますが、手書きでメモを取ることで脳が活性化し記憶に定着しやすくなる、ということは色々なところで語られています。
例えば『学びを結果に変える アウトプット大全』で有名な樺沢紫苑氏も書籍の中で下記のように紹介しています。
なぜ、「書く」ことはそんなにいいのでしょうか?それは、「書く」ことで、脳幹網様体賦活系(RAS:Reticular Activating System)が刺激されるからです。
RASが刺激されると、大脳皮質全体に「目覚めよ!注意せよ!細かいところまで見逃すな!」という信号が送られます。脳は、その対象物に対して集中力を高め、積極的に情報を収集し始めるのです。それは検索エンジン「Google」にキーワードを入力するようなものです。
樺沢紫苑著 『学びを結果に変えるアウトプット大全』より抜粋
私もスマホ、PCでメモを取ることが多くなっていましたが、これらの本を読んで改めて手書きのメモも実践しています。
検索性はデジタルの方がやはり高いと感じますので、私は手書きでメモをし、必要に応じてPCなどでメモを整理しています。
2度手間と感じる人もいると思いますが、メモを整理し直す際は人に説明できる状態を意識して書くため、メモをとる、アウトプットする、というステップを習慣化でき、記憶にも残りやすくなります。
メモで自分の理解を深める
本書ではメモを自己分析に活用する方法も書かれています。
今、自己分析がなぜ重要かというと下記のように説明されています。
最終的には「自分は何をやりたいのか?」という問いに行き着きます。自分を知り、自分の望みを知らないまま、どんなビジネス書を読んでも、どんなセミナーに行っても、まず何も変わらないでしょう。まず「自分を知る」ことが何よりも重要です。
『メモの魔力』より
定年まで起業で働き続けるというのが安定した選択肢でなくなり、個人に焦点が当たるようになっている現代では「自分が何をしていきたいのか」「何ができれば幸せなのか」を明確に認識しているのは非常に重要ですね。
本書で自己分析用の質問が1,000個用意されており、編集者の箕輪さんのTwitterで公開されています。ぜひ試してみてください。
メモで夢をかなえる
「夢を紙に書くと現実になる」というのは色々なところで言われていますが、前田さんが考える理由が2つ紹介されています。
1つはマインドシェアの問題です。その夢について紙に書いた時点で潜在意識に刷り込まれる度合いが高くなります。夢について考える時間が長ければ長いほど、夢をかなえるために必要なことをブレイクダウンして考えたり、現在地点との距離を測ってその差分を埋めるための努力方法を見極めたり、妨げになりそうな障害や課題をつぶしていこう、という問題意識も芽生えます。
2つ目に、言霊の力です。前田さんの言う言霊の力、とは言葉によって誰かの意識が変わり、それが何らかの形で自分にポジティブに跳ね返ってくる、というものです。言葉にする、発信することによって仲間や共感者、サポーターが自分が向いたいと思っている正しい方向に導いてくれる可能性が高くなります。
本書の内容を実践し、知識、情報をストックし、アイディアを生み出す、というステップを試してみてください。
著者:前田裕二
書籍より
SHOWROOM株式会社代表取締役社長。1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入行。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。数千億~兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。13年、DeNAに入社。仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同年8月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合併会社化。著書『人生の勝算』はAmazonベストセラー1位を獲得。
この記事で引用した書籍はこちら。